2019年12月31日火曜日

Fifth Chapter

Fifth Chapter


誰かに認められる。誰かに応援してもらえる。誰かにとって大切な存在になる。
そういうことは、きっと大切なことなんだと思う。
ロンドンに来てこの時には4ヶ月ぐらい経っていたと思う。
別に評価されて入れた訳でもないし
何一つとして取り柄がない自分が、
ようやくこの”Sanrizz”というサロンに認められた瞬間だった。


今は、違うブランチに所属しているが
このスタイリストと仕事出来たこと、
同じフロアに立てたことは自分の財産だと思う。
自分のロンドンで働くメンターでもあり
そして、美容師の基礎を教えてくれた人。そんな人である。






初めて入客したその日。
それは、同時に自分の長年の夢も叶った瞬間でもある。
ただ、昔どこかの誰かが、
”夢は叶えるのは…
案外簡単であって叶った夢と向き合う方が難しい”
本当にその言葉通りで
毎日、大小サイズはバラバラだけど壁にぶつかる日々だった。
技術的な部分では、日本で習った技術で補えないこともない部分が
まだあったけど…


一番の障壁は、
やっぱり”言葉の壁”であった。


言葉の背景にある感覚の違い。
そして細かなニュアンス。


カウンセリングの時点でお客様からしたら
『このスタイリストで大丈夫なのか』
そして、最大級の不安なのは、
『このアジア人に任せていいのか』


自信のある言葉とプロフェッショナルとしてのカウンセリングを
ネイティブスピーカーと同レベルで話せるか、
そこが出来なければ技術がどんだけあっても
やはりお客様には、不安を抱かせてしまう。


毎日、帰りのバスではぐったりと”一人反省会”という名の
肩を落としながら帰る日々も続いた。

それでもやはり自分を奮い立たせるのは
他でもない自分である。


とにかく、
子供が親の口真似をするかの如く
周りのスタイリストのカウンセリングを真似て
本当は逃げ出したいぐらいに自信は余り無いけど
毎日、フロアに立って全力で接客の限りを行った。


そういう努力もあったのか、
どんどん指名をしてくれる
お客様が増えたのは最近の話である。


ここまで仕事の話が中心になってしまったけど
正直、ほとんど仕事しかしていない。
ワーキングホリデーという名の修行。
そんな言葉がぴったりな。そんな毎日である。
週6日勤務の朝から夜まで。
収入は、日本時代の1/4ぐらい。
端から見たら今の言葉でいうブラックとかなんだろう。

ただ、綺麗事でもあるけど
日本では絶対に体験できないこと。
海外にある日系サロンでは確実に経験できないこと。
そして、何も武器も無い自分を
海外で働く日本人スタイリストってよりも
ナショナリティーとかを度外視して
チームの一員として認めてくれ雇用してくれたこと。
そんなことに不満などあろうことかって思う。
















正直、仕事以外で強烈な思い出としては
ロンドンの街で”家なき子”になりかけたことかと思う。

最悪のオーナーのもとを離れて
仮住まいいわゆる短期として借りたアパートで
この期間が終わった後に住む家を探していた時の話。

海外らしいエピソードなのかもしれないけど、
ネットでの募集サイトで家を探すのが主流で
自分も忙しい人間でもあるので手取り早く探したいこともあり
ロンドンのど真ん中で好条件の家のオーナーに連絡をした。

ロンドンでも有数の立地にあり
ネットでの対応と物件のキレイさも気に入り
その日にデポジット(敷金)を払ったのは
振り返ると運の尽きだったのは言うまでも無い。

仮住まいの家の契約を残して、
引越しの準備もそこそこに
いざ引越しをしようとした時に
新居のオーナーから


『違う人間が3ヶ月分家賃を前払いして借りたいと言っている。
今、もし家賃として3ヶ月ぶん払えば私はあなたにぜひ貸したいと思う』


この状況でそんなお金は無いので
お断りの連絡、デポジットの返金を要求すると


『それは出来ない。』の一点張り。


そして、連絡も途絶えた。
後から分かったのは、端からこのオーナーは人に貸す気もないうえに
もっと言ってしまえば物件そのものも無かった。

自分の判断ミスであるが、
いわゆる完全に詐欺にあったのである。


所持金もほぼほぼ無い状態。
給料日までまだまだ。
仮住まいの家の退去日は目の前。


この、ロンドンで住所不定無職では無いが
安心して過ごせる家が無いことは想像もして無かった。

当然、家も探す時間も無く
仮住まいの退去日まで粘って探したが見つからず
またまた仮住まいとしてホテル暮らしに突入した。

ホテル暮らし。
聞こえはいいがそんなものでもなく
『戻るまい!!』って後をした
ロンドン生活のスタートを切った
バックパッカー向けの宿に宿泊することになった。

また、秩序正しく並べられた6台の2段ベットが並べられた部屋。
4月以来に戻ってきてもやはり慣れるわけも無く状況も状況で
あの時は、心が病んでしまうってこういうことかって思うほど
仕事は明るく出来ても帰る家(宿)では病む毎日だった。

”人には迷惑をかけたくない。気を使わせたく無い”
そんなバカなプライドのおかげで周りに相談することもできず
しばらく二進も三進もいかない毎日を過ごしていた。

しかし、バレるものはバレる。
同僚から調子悪いのかって思われるほどにどこかが変だったのであろう。
正直にことの経緯を全て説明した。もちろん、詐欺にあったことも。
ここまで人のために動ける人いる?って思うほどに
警察への相談であったり、知り合いの弁護士に協力を仰いでくれたり
解決に向けて協力してもらえた。
結果的には、まだ解決は出来ていないけど
自分のことかのように人のために動きそして協力してくれた。
そして
今現在は周りの同僚のおかげで定住できる家も見つかり
やっと安定したロンドン生活を送れている。















第5回に分けて自分の留学生活を文章にしてみた。
ってよりも、個人的に箇条書きでメモしていた事柄を繋いだだけなので
加筆・訂正を加えたこともありまだまだ書けてないことばっかりであるけど
ざっくりと自分のロンドンの生活の今まではこんな感じである。
このロンドン美容師留学生活がスタートした2019年は、
自分のこれからの人生の基盤が28年目にしてやっと作られたそんな一年である。
だからこそ思うことは…
まだまだこのロンドンで美容師をしたい。
まだまだこのロンドンで生活をそして生きてみたい。
そんなことをここ最近ずっと考えている。



年が変わってしばらくすれば
留学生活2年目がスタートする。




”まだまだ挑戦したい。”





それが、今の自分の気持ちであり

実現したい夢である。















小野寺奨 個人HP  ただの表現の場所 LINE:@tsutomu1201jp mail:tsutomu1201jp@gmail.com

0 件のコメント:

コメントを投稿