2019年12月28日土曜日

Second chapter

Second chapter

たった一人の人間の高揚感を他所に淡々と搭乗の手続きは済んでいった。
いつも空港に行く時は、なんか背筋が伸びる。
”もう後戻り出来ないし山にも引き篭もれないし進むしかない”
そんなことを思いながら搭乗ゲート前の待合で座りながら
自分を鼓舞する言葉を頭に浮かべ定刻まで待っていた。

”頑張れ。応援してる!!”

普段、あんまり連絡手段の体を成していない
いつまで使ってんの?ってぐらい古いスマホの画面に
表示された言葉に胸にくるものがあった。

いよいよ搭乗の時刻になり
片道切符の韓国・仁川経由で長年の思いを抱きながら
イギリス・ヒースロー空港に向かった。

14時間ぐらいのフライト。
今思い返してもとにかく寝てた記憶しかない。
年を明けてからノンストップで離れる前々日まで
ガッツリ仕事したことも影響して、体は正直に疲れていた。

クセのある機内アナウンスと共に
着陸態勢を取った飛行機の窓の外には、
人生でこんなに憧れてきたロンドンの街並みが広がっている。
本当にこんな高揚感は、大人になって初めての経験だった。
”いよいよ、新しい第一歩”
そんな想いを馳せながらロンドンに着いた。


入国審査官の事務的な
”Welcome England"っていう言葉を後に
人生で初めてイギリス・ロンドンに着いた。

















乗り心地の悪い Tubeに揺られながら
ロンドンの中心部へ。
いつもの癖でスマホを眺めても
電波も入ってない。


当たり前である。

留学は2度目だけど、
やっぱり最初はルーキに戻って
当たり前だったことを一つずつ積み重ねていかなければならない。


ロンドン市内で初めて来たエリア。
日本を離れてどんだけの時間が過ぎたんだろう?って思うぐらいに
時間の感覚とかも無くなって
ただただ、このメルカリで買った
ただただ大きなスーツケースを相棒に
仮の住処になるバックパッカー向けのホテルへ向かった。

すっかりと夜が深くなっていたのもあり
周りに目印なるものも無く、
手元には、偶然に駅でWifiがつながった時に確保出来た
Google mapを当てにやっとの想いで宿へ着いた。













秩序正しく並べられた2段ベットが
そこまでも広くない部屋に6台並べられ
男女関係なく12人の人間が寝ていると思うと
ここが、人生の底辺って思った配送業者の工場の日々が
どうしてかフラッシュバックしてきた。
でも、気持ちだけは前向きで
”ここから一歩ずつやるしかない”って
どれだけポジティブなのかって笑えるほどに。


生活基準を整えるために
ホテル自体は10日間予約しておいた。
この猶予期間で全てを整えるのは、
思い返しても容易ではなかったのは言うまでもない。

定住出来る家の確保。
携帯の契約
銀行口座の開設
在留証明の確保
語学学校入学の手続き
etc

当然全てが英語。
事前に調べていたことと肌で感じるものは
全く違う訳であるので自分の無力さに笑けてきた。

















2度目の留学とは言えども
この国、この街ではルーキである。
そんな小さなことも積み重ねていかないといけないって痛感した。



そして、
何よりもこの留学の最大の目的で最重要課題でもある


”イギリス系サロンへの就職”


これに関しては、後に詳しく書こうって思うけど
単に言えば”そんなに人生甘く無いよ”って
2019年の年末にいる自分が、この時の楽観している自分に伝えてあげたい。


10日間の猶予期間に仕事探し以外は、
大変なこともありながら何とか順調に進んでいった。
事務的なことは、どの国も事務的で
別にそこに何を求めている訳では無いけど
ただ淡々と進んでいき
ようやく仮免許が外れた。そんな感覚だった。


イギリスでの初めての生活基盤になる家。
それは、今振り返っても最悪でしかなかった。
”大家運”そんな項目占いでは無いけど、
もしあるとしたらスコア0だと思うほどに
昔から、あまりそんなに快適に過ごせたことは無い。


・午後9時以降のキッチン使用中止。
・冷蔵庫における食品は3品まで。
・洗濯は日曜日の午後3時以降。
・キッチンを使用した際には、
 大掃除かの如く後片付けの徹底 etc


思い出しただけでも頭が痛くなるような常軌を逸したルール。
当然、日常生活には影響は出まくりであったけど
契約上デポジット(敷金)を10万円近く支払ってしまったこともあり
この後4ヶ月も過ごすことになった。
心のシャッター完全に閉じ議論することにも疲れた自分は、
不思議なことにこの環境に慣れてしまっていた。
退去の際に長髪の自分の髪の毛でもない
髪がバスタブに1本残ってただけで
1万円近く減額されて
デポジットが返ってきたのは、
このオーナーを象徴する出来事だったのは言うまでもない。












時系列が前後してしまうけど、
当然、語学学校にも通った。
ヨーロッパ各国から来ている学生の言葉の独特の訛りに
戸惑いも感じながらも2年程真剣に勉強出来ていなかった
英語に向き合うことも出来た。
まぁ、当然まだまだお子様英語レベルなのは間違いない。
クラスメイトと少しずつだけど打ち解けてきた
そんな時には、卒業の時期も近づいてきていた。
サポート体制の整う学校だったのもあり様々な面で助けてもらったのは言うまでもない。

そして、卒業を控えた前日。
先生との最終の面談。

淡々と当たり障りのない言葉が列挙された紙を読み上げる
先生を目の前に僕も当たり障りの無い拙い言葉で返す。
いよいよ最後の項目。


”これからイギリスでどういう生活をするか”


”ローカルサロンに入って美容師として働く”



”No way!!”(それは無理だよ)



小野寺奨 個人HP  ただの表現の場所 LINE:@tsutomu1201jp mail:tsutomu1201jp@gmail.com

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