2019年12月29日日曜日

Third Chapter


Third Chapter


No way”(そんなの無理だよ)

中学生の時に聞いたAvril Lavigneの歌詞ではないけれど
真正面から飛び込んできた否定の言葉に不思議と
怒りもなければ悔しさも無く自然と受け入れる自分がいた。

冷静に考えてみれば分かる話である。
何の実績も無ければ英語がすごく出来る訳でも無い
イギリス人が日本人美容師を求めているかって
Yes or Noで問われたら当然後者である。

ましてや、
細かなニュアンスなどを汲み取る能力。
ここでいう能力は、フィーリングとかで無くって
純粋に言葉を汲み上げる能力が無い=英語が特段に話せない人間に対して
”はい。どうぞ”なんて言える
会社など無いって判断する事はできる。

少し前の自分だったら
”何くそ。やらないと分からない”って反論してたけど
もう、30歳を目前にした大人な自分は
”現実論”として先生の言葉を捉えていた。















ただ…
”何のために積年の想いで来ることができた
このイギリスにいるのか?”
”自分がしたいことは何のか?”って
自分自身に向き合った時に、
美辞麗句では無いけど
『絶対に挑戦もしていないのに後悔だけはしたく無い』
そんな現実的では無いHappy野郎な絵空事を
考えるようになっていた。


”やるしかない”って決めてからは、アクションを起こすのは早かった
とにかく泥臭くやるしかないって思い
ロンドンのトップサロンには、ほとんどCV(履歴書)を直接配る日々が続いた。
当然、受け取るだけで終わるサロンがほとんどだった。
それでももう一度面接だけでもいいからお願いしますって
電話したりactionを絶え間なく取り続けた。

特にイギリス・ロンドン美容界のTOPでもある
”Vidal Sassoon”も例外なく何度も足を運んで
『ここで働かせてください』って
どこかのジブリ映画の主人公ばりにお願いし続けた。
でも、やはり人が足りているっていうタイミングの問題もあったけど
純粋に自社のスクール上がりでも無い日本人を雇ってくれる訳もなく
何度目かは定かでは無いけど”It’s Over”(もう終わり)
って言われた時には心は完全に折れてしまった。













日本を離れて約1ヶ月近く
本来の目的であるスタート地点に立てず仕舞いで
何してんだろうって思う日々が続いた。
学校も卒業したことによって
何の社会の歯車にもなっていない毎日。
そろそろ冷静に諦めて日系の募集が出ている
サロンに応募しようと決断しかけた時に電話がなった。

『ご連絡を遅れてしまいすみません。
 履歴書を見たからよかったら
 明日の昼ごろに一度会いませんか?』って

英語での言葉が電話に届いた。
それと同時に何となくこんな窮地な時に
訪れたチャンスは逃したくない
きっと”何かある”に違いないって思い
二つ返事で
『今から行きます!』って言いサロンに向かった。

三 SANRIZZ 












このサロンとの出会いが、
現在進行形で自分の人生に大きな影響を与えることになる。

即断即決でアクションを起こしたのは良いが
自分自身に全くと言って自信も無いままサロンに着いた。

白を基調としたサロンスペースに
統一された制服を崩すことなくビシって正当に着こなすスタッフ。
入った瞬間に少し背筋を伸ばされながら
レセプションに面接を受けにきた旨を伝えた。

地下にあるアカデミースペースに通された頃には、
今までにない緊張感に襲われていた。

それもそうである。日本にいる時に
Vidal Sassoonの次に挑戦したいサロンが、
このSanrizzであった。

そして、その時は来た。
オーナーであるTony Rizzo。
この人の出会いが無ければどうなっていたのかって考えると
少し恐くなるほど今の自分を形成する出会いになった。

質問された内容が、
今文章に起こせないほど緊張と高揚感で
忘れてしまっている部分が大半である。

面接の最後に
『明日、もう一度来てください』と一言。
眼前に現れたこの人に何を思われてるのか
この時は、分からなかったけど
これこそ最大のチャンスと思い浮き足立つ自分を冷静に抑えてサロンを後にした。

”行動しないとチャンスは訪れない”
そんな安っぽい自己啓発本に書かれているような文言で
普段の自分なら信じないような言葉でさえ
この時の自分は信じることが出来た。

翌日、
人生でいろんなXデーと呼ばれるものがあるけど
この先の人生に於いても大きなxデーになるそんな日になった。


何の知らせもなく心の準備もなく
その日が最終試験だと気づいたの
入社してからの話。

その日はBossに加えて
アカデミーの教育担当でもあり
サロンのNo,2の女性スタイリストが
見守る中でのトライアル(実技)試験。
モデルを目の前にカウンセリングから
最後の仕上げまでを行い
合否の判断が下される。


勢いで進んでしまったこともあり
何が正解で何が不正解なのか分からずに
ただ、ただ、
自分のBestを尽くすしかなかった。
技術はそこそこにだけど…
何よりも大切なホスピタリティの部分は、
余裕の無さからくる焦りで
何も良いものは無かった。

“ここまでの挑戦をして
失敗しても後悔はない。"


そんなことを考えていると
自分の予想と反して
”ここでやってみたらどうか”と
Bossから一言。


”自分の人生が少しずつ動きだす”


自分の人生が動き出す経験は、
これまでも幾度かあったかもしれないけど
きっとこんな経験は、
先にも後にも無いと思う。


ただ、思えたのは
”行動しないと、自分からアクションを起こさないと
人生は何も起こらない”


そんな当たり前なことを教えてもらった経験だった。



小野寺奨 個人HP  ただの表現の場所 LINE:@tsutomu1201jp mail:tsutomu1201jp@gmail.com

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